バイオリソースニュースレター BioResource Now!
 2016
Vol.12 No.4
PDF download
 研究とバイオリソース <No.26>
オオムギの種子休眠を制御する新たな仕組み   Read more >>>

 じょうほう通信: <No.104> Macのサービス機能でGoogle Scholar検索   Read more>>>

バイオリソース関連サイト
   (別窓で開きます)

 研究とバイオリソース <No.25>

オオムギの種子休眠を制御する新たな仕組み

佐藤 和広(岡山大学資源植物科学研究所)

2016年5月18日号のNature Communications誌において、オオムギの種子休眠遺伝子に関する論文が発表されました。現在栽培されているオオムギの祖先となった野生オオムギは、中東を中心に自生しています。野生オオムギは秋から春にかけて生育しますが、成熟後、夏の高温乾燥を耐えるために発芽を一定期間休止し、数カ月を種子の状態で休眠して過ごします。オオムギは1万年ほど前にこの野生オオムギから生まれ、世界各地に伝わりました。

岡山大学では約50年前からオオムギの種子休眠を研究しており、世界中の栽培オオムギと野生オオムギを合わせて約5,000品種の休眠程度を調査して、野生オオムギに長い種子休眠のあること、栽培オオムギの中にも地域や用途によって種子休眠の長短に大きな差があることを確認していました。さらに、その後の遺伝解析によって、種子休眠性には多数の遺伝子が関わっていることが示されていましたが、その遺伝子の構造や機能は分かっていませんでした。

 種子休眠性遺伝子の同定と機能

今回、岡山大学および農研機構の国際共同研究グループは、ゲノム情報、遺伝学的解析、分子生物学的な証明を組み合わせた最新の科学技術を用いて、野生オオムギに存在する主要な種子休眠性に関わるQsd1のDNA配列を決定。種子休眠に差のある品種の遺伝子配列を解析し、遺伝子内のアミノ酸の1つが変化して、休眠性遺伝子が休眠型から非休眠型(写真1)に変わることを突き止めました。

さらに、種子休眠性遺伝子Qsd1は、これまで植物種子の休眠性では報告のない、アラニンアミノ基転移酵素を制御することを発見しました。従来、植物の種子の休眠にはアブシジン酸(ABA)などの植物ホルモンが関わっていると考えられていました。しかし、今回解析されたオオムギの種子休眠性遺伝子は、植物ホルモンの作用とは直接的に関わりのない原因で制御されていることがわかりました。

  Fig.2
写真1.休眠型(左)と非休眠型(右)の 遺伝子のみが異なるオオムギ系統の5週間後の発芽
 種子休眠は醸造によって 短くなった

世界中から集めた、300品種あまりの野生オオムギと栽培オオムギのQsd1遺伝子配列を比較すると、休眠性が短くなった品種では同じ部分の配列が変異してアミノ酸が変わり、別のタンパク質として発芽を促進することがわかりました。これらの休眠の短い品種の多くは醸造用で、遺伝子配列を解読した進化解析の結果、その祖先はイスラエル付近(南レバント:図1)の野生オオムギに起源することが示されました。イスラエル起源の野生オオムギは、その後、栽培オオムギとしてヨーロッパに伝わり、チェコや英国を中心に醸造用オオムギとして改良された際に休眠性が短くなり、近代になって日本を含む世界各地に伝わったことがわかりました。

  Fig.4
図1.レバントの範囲の例
 種子休眠遺伝子は胚でのみ働く

オオムギにはアラニンアミノ基転移酵素遺伝子が5種類(Qsd1を含む)あると報告されています。本酵素は、ピルビン酸とグルタミン酸をアラニンなどに相互変換する機能を持ち、種子や葉、根など、生育の全期間を通じて働いています。
しかし、本研究で解析したQsd1は、これまで報告されているオオムギのアラニンアミノ基転移酵素遺伝子と異なり、種子が成熟するに従って、種子中の胚で特異的に作用することがわかりました(写真2)。オオムギは、本遺伝子が胚で特異的に作用することで、アラニンの代謝を制御し、種子の休眠の長さを調節する仕組みを持つことを発見しました(図2)。他の植物にもアラニンアミノ基転移酵素遺伝子が存在し、特にイネの遺伝子の中にはオオムギと同じように胚で働く遺伝子も含まれていますが、アラニンアミノ基転移酵素遺伝子が、休眠に作用するという報告はこれまでありませんでした。

photo2
写真2.受精後19日目の野生オオムギの種子。分子交雑で着色した休眠性遺伝子が、写真右上の胚で作用している。
 
Fig.4
図2. Qsd1がアラニンの代謝を制御し、種子の休眠の長さを調整する仕組み

栽培オオムギには休眠の長短があり、遺伝子配列の違いによってこれらの差違が生じていると考えられます。ビールやウイスキー用の麦芽を造るオオムギは休眠が短く、同じタイミングで斉一に発芽する必要があります。一方、日本や北欧など収穫期に雨の多い地域のオオムギ生産では、穂についたまま芽の出る穂発芽が、大きな障害となっています。遺伝子鑑定で調べられた休眠性の長短を、本研究成果を用いて制御することで、醸造業や収穫時に雨の多い地域のオオムギ生産に貢献することが期待されます。

  参考文献
  Sato K, Yamane M, Yamaji N, Kanamori H, Tagiri A, Schwerdt J, Fincher G, Tatsumoto T, Takeda K and Komatsuda T. Alanine aminotransferase controls seed dormancy in barley (2016) Nature Communications 20: 186-196
DOI: 10.1038/NCOMMS11625

 じょうほう通信  <No.104>

Macのサービス機能でGoogle Scholar検索



アカデミック分野ではMacを利用されている方が多いということで、2014年5月発行のニュースレター(Vol.10 No.5)の「じょうほう通信」ではMacに標準インストールされている「Automator」というアプリケーションで、ファイル名の変更と連番付けを行う方法を紹介しました。今回はこの「Automator」で作成されたワークフローで、Google Scholarを検索する方法を紹介いたします。


準 備

1.http://schutt.org/blog/2009/11/services-menu/の下部にある "Search with Google Scholar Service" をクリックし、"Google Scholar.workflow"というワークフローファイルをダウンロードします(図1)。

2. Finderメニューの「移動」をクリックし、メニューが表示された状態で「option」キーを押すとメニュー項目に「ライブラリ」が出現しますので選択して(図2A)、「ライブラリ」フォルダに移動します。次に、先ほどダウンロードした"Google Scholar.workflow"を「ライブラリ」フォルダ内の「Services」フォルダ(図2B)に入れて、準備は終わりです。


検 索

通常は、Google Scholarサイトでキーワードを入力して検索しますが、このワークフローはマックのサービスとして機能しますので、テキストファイルやPDF、ブラウザで開いているウェブページなど、文字列がドラッグできるところであれば基本的にどこからでも検索でき、検索結果はGoogle Scholarサイトで表示されます。

図3は2016年1月発行のニュースレター記事(PDFファイル)にあるスギの学名を検索した例です。検索キーワードを選択し右クリックで表示されるメニューから"Search with Google Scholar "を選択すると、結果がGoogle Scholarサイトで表示されます。(図4)

また、ブラウザ内に表示したPDFファイルなど、右クリックメニューに"Search with Google Scholar "が表示されない場合は、アプリケーション名のメニュー(下記例では"Safari"メニュー)の「サービス」メニュー(図5C)から選択できます。
  Fig. 1
図1. ワークフローファイルのダウンロード
Fig. 2
図2.ワークフローファイルの保存先

図3. 検索メニュー
Fig. 3,4
図4. Google Scholarでの検索結果表示
Fig. 5
図5.「サービス」メニュー内に"Search with Google Scholar"



このワークフローについて

このワークフローは、ドラッグした文字列をGoogle ScholarのURLに付加するPerlスクリプト2行のアクションと、そのURLを表示するアクションからできています。

ダウンロードサイトの記事は2009年と古いものですが、このように単純なワークフローですので最新のOS X El Capitanでも動作します。

このワークフローはドラッグ範囲にある一つ以上のキーワードで検索することはできますが、言い換えるとドラッグ外にあるキーワードを追加することはできません。 更なる絞り込みはGoogle Scholarサイトで行うことになりますが、今読んでいる文献等から簡単に検索できますので、Google Scholarの入り口として利用できるのではないかと思います。

(佐賀 正和)