
PubMedのトップページ※1にアクセスした時に、PubMed Commonsというコンテンツが表示されることを知っているでしょうか(図1の赤枠)。または、PubMedに登録されている論文情報にコメントが付いていることをご存知でしょうか(図2の赤枠)。このコメントこそがPubMed Commonsの機能となります。今回はPubMed Commonsについてご紹介したいと思います。

PubMed Commonsは、PubMedに登録されている出版物について著者と意見や情報を共有できる仕組みです。2013年10月にメンバーを限定した形で試験版がリリースされ、2013年12月には一般ユーザーも閲覧可能となりました。
コメントは誰でも読むことが出来ます。もしコメントの付いた出版物のみ検索する場合、PubMedの検索ボックスに「has_user_comments [filter]」と入力して検索するだけです(図3)。赤枠にコメント数が表示されていることが分かります。また自分の出版物にコメントが付いているか調べることも、検索条件に自分の名前を含めることで可能となります(例えば、「Chimenko I [author] AND has_user_comments [filter]」)※2。
一方、コメントの投稿は誰でも出来るわけではなく、PubMedに登録された出版物の著者に限られます。PubMed Commons を有効にするためにはNIHで収集しているメールアドレスのリストと自分の持つメールアドレスを照合することで自分自身を招待したり、既にPubMed Commonsに登録済みのメンバーから招待を受けたりすることで、投稿できるようになります。自分自身で有効にできるかどうかは図4のページで確認することが出来ます。

2015年12月のPubMed Commonsブログの記事※3によると、9,500名以上の著者がPubMed Commonsに参加し、3,300の出版物に対して4,000以上のコメントを投稿している状況です。コメント数はあまり伸びておらず頭打ちの傾向にありますが、有用なコメントが投稿されているとのことです。またコメントのついている出版物の内、約半数は臨床またはヘルスケア関連となっています。
自分自身に関する出版物にコメントを投稿する著者は約20パーセントであり、これらの内3分の1は、他者からの質問や議論に対して返信されたものだということです。運営者側は、コメントの付いた出版物の著者に通知するサービスを開始することで、著者のコメントの割合は増えたが、いまだ回答率は10%を下回ったままであり、引き続き著者のレスポンスを促進する方法に取り組んでいるようです。
PubMedは1996年1月の最初のリリースから数えると20周年となり、昨年1年間に27億回以上の検索が行われる巨大な文献検索サイトです。そのことを念頭に置くと、PubMed Commonsの活用のスピードはゆっくりとしたものですが、PubMed Commonsサイトへの訪問数は、2014年の上半期の120万人から2015年の上半期には230万人と倍増しており、コメントに対する関心が高まっているとのことです。
ぜひPubMed Commonsを上手く使いながら、目的の文献の検索および情報収集、情報の発信・議論を行ってみてはいかがでしょうか。
(木村 学)
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図1. PubMedのトップページ

図2. PubMedにおいてコメントが付けられた掲載論文

図3. コメントの付いた出版物の検索結果

図4. PubMed Commonsのサインインおよび認証 |