
生物遺伝資源センターは2014年11月に新棟に引っ越しました。その際、サーバラックを耐震から免震に変更したので、「免震サーバラック」についてご紹介したいと思います。
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地震対策では振動による被害を軽減する方法として、免震・耐震・制震があります。免震は揺れを免れる、耐震は揺れに耐える、制震は揺れを制御することを意味します。それぞれ価格・導入のし易さ・性能など一長一短あります。情報セキュリティと同じで、対策費用に上限はありません。そのため、J-SHIS(地震ハザードステーション)や全国地震予測地図から、今後発生する地震の大きさの目安を見積もり、対策を立てるのが良いと思われます。これによると、静岡県三島市で今後30年以内に震度6強以上の地震が発生する確率は26~100%となっています(図1)。また、一般的にハードディスクは震度5程度までの衝撃に耐えられると言われています。そのため、情報センターでは震度6強以上の地震が起きても、震度5程度までに揺れを抑えることを対策の目標としました。

1. 免震サーバラック
免震サーバラックは地震の揺れと同期することで、サーバラック内で発生する振動を軽減します。今回は震度7程度の地震でも震度5程度まで軽減できる製品を選択しました。欠点はラックが揺れるため設置した以上の面積が必要なこと、10階以上では建物の揺れが大きくなり、建物の揺れと地震の揺れが、免震装置の許容限界を超えてしまうためです。また、装置によっては免震機構が複雑になるため、維持と壊れた場合の対応ついても配慮が必要です。
情報センターが使用しているサーバ室は上記の欠点を克服できていたため、免震装置とサーバラックが一体化した免震サーバラック(図2)を導入しました。この他にも、免震装置のみで販売されている製品(現在使用しているサーバラックを再利用することができます)や、免震装置プレート式もあります(薄い板を2枚重ねたもので、これは他の免震装置と比べて、構造が単純で設置し易い利点があります)。
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図 1. 三島市付近で30年以内に地震6強以上の発生予測(J-SHISから引用)
図 2. 免震サーバラック |
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2. 震度とGal
免震・耐震・制震装置では、耐えられる揺れをGal(加速度の単位)で表記されます。Galで表記することで、より定量的に評価することができます。例えば震度5は、Galで表記すると80~250galとなります。震度6は250~400gal、震度7は400gal以上です。また、評価試験として阪神・淡路大震災がよく引用されますが、この時観測された最大加速度は818galと言われています。情報センターで導入した免震ラックは、この値まで対応できることが保障されています。参考までに、東日本大震災は2933galが計測されました。震度8は6000gal以上と設定されていますが、自然界では発生しないと言われています。
今回導入した免震ラックでは、震度7(920gal)を震度5(200gal)まで低減できます。また、HDD装置は震度5強まで耐えられることから、大地震が来てもHDDを地震から守ることができると考えています。
(渡邉 融) |