バイオリソースニュースレター BioResource Now!
  June 2014
Vol.10 No.6
PDF download別窓で開きます
 研究とバイオリソース  <No. 16>
アサガオの新規突然変異を利用した
「花の色を濃くするタンパク質」の発見

Read more >>>

 じょうほう通信 <No.89>
PubMedのLinkOut登録について
Read more>>>

 今月のデータベース ミヤコグサ・ダイズデータベース
Read more>>>

バイオリソース関連サイト
   (別窓で開きます)

研究とバイオリソース  <No. 16>

アサガオの新規突然変異を利用した 「花の色を濃くするタンパク質」の発見

星野敦 (基礎生物学研究所・モデル生物研究センター 助教)

アサガオには、江戸時代の後期に生じた突然変異が多く現存しています。これらは、「Tpn1ファミリーのトランスポゾン」と呼ばれる動く遺伝子が、ほかの遺伝子に挿入することで生じたものです。このトランスポゾンは、アサガオのゲノム中に800ほどもあるうえに、現在でも動く活性があるので、しばしば新しい突然変異を生みます。そのような新しい突然変異を利用することで、「花の色を濃くするタンパク質」が発見されました。

 研究の背景

花の多くは、アントシアニンにより彩られています。アントシアニンは植物の代表的な色素で、フラボノイドと呼ばれるポリフェフェノールの一種です。花の色の濃さは、そこに含まれるアントシアニンの量によって決まり、多く含まれるほど色が濃くなります。これまで、アントシアニンの含有量を調節する因子や仕組みについての知見は限られていました。

 新たに現れた花の色を薄くする突然変異

今回の研究では、アントシアニンの含有量を少なくして花の色を薄くする性質をもつ、新しい変異が使われました。この変異は人工的に作られたものではなく、「紅ちどり」という市販の系統から自然に現れました。実際には、紅ちどりから直に現れたのではなく、3度も突然変異が繰り返しておきて現れました(図1)。

  Fig.1
図1:AK28の薄いピンク色の花には、濃い赤色の斑点(白い矢の先など)が観察されます。

はじめの変異では、濃い赤色の花の紅ちどりが、白地に赤い斑点模様の花を咲かせるようになりました。この変異は、平成12年に富山県の一般の方が見つけました。その種子を私たちが入手して栽培していたところ、さらに2度の突然変異がおきました。1つは、富山で現れた突然変異が復帰変異をおこして、もとの赤い花を咲かせるようになるもの。もう1つは、この研究に利用された花の色を薄くするという変異でした。このように偶然が重なって得られた薄い赤色の花を咲かせる系統(AK28)は、新しいリソースとしてNBRPアサガオによって収集されました。

 EFPタンパク質の発見

AK28の薄い赤色の花には、紅ちどり本来の濃い赤色の斑点模様が観察されます。また、AK28の種をまくと、紅ちどりと同じように濃い赤色の花を咲かせる復帰変異体も得られます。このような表現型は、トランスポゾンが関与する変異によく見られるものです。そこで、アサガオのTpn1ファミリーのトランスポゾンが突然変異をおこしたと仮定して原因遺伝子を探索しました。探索には「トランスポゾン・ディスプレー法」という、トランスポゾンに接したDNA配列をPCRで増幅する方法を用いました(図2)。変異体ではトランスポゾンが挿入しているので原因遺伝子に由来するDNA断片が増幅するが、野生型の植物や復帰変異体では増幅しないという原理にもとづく方法です。この方法で見つかった原因遺伝子は、それまで機能が知られていないタンパク質をコードしていました。花の色素を調べると、アントシアニンだけでなく、無色のフラボノールというフラボノイドの生合成も促進する機能を持つことが分かったので、Enhancer of Flavonoid Production(EFP)と名付けました。EFP は、EFPが働かない場合に比べてアントシアンの生産効率を3倍程度に高めています。

さらに私たちは、NBRPアサガオで収集されている薄い色の花の39系統について、EFP遺伝子を調べました。その結果、そのうち32系統は機能欠損したEFP遺伝子をもつことが分かりました。また、ペチュニアやトレニアのEFPも、アサガオの場合とおなじようにフラボノイドの生産効率を高める働きがあることが明らかになりました。

  Fig.2  
図2:トランスポゾン・ディスプレー法。
変異体では、原因遺伝子にトランスポゾンが挿入しています。ゲノムDNAを制限酵素で切断し、切断部分にアダプターを結合させたあと、アダプターとトランスポゾンの配列上に設計したプライマーを用いてPCRを行います。トランスポゾン側のプライマーは蛍光標識してあるため、電気泳動像を蛍光スキャナーで解析すると、このプライマーにより増幅したDNA断片だけが検出されます(アダプター側のプライマー同士で増幅したDNA断片は検出されない)。変異体に共通して現れる原因遺伝子に由来する断片を、ゲルから回収して塩基配列を決定するなどして、原因遺伝子を特定します。
 今後の展望

今のところEFPが、どのような仕組みでフラボノイドの生産効率を高めているのかは謎のままです。これを解き明かすことで、植物が物質生産を効率化する仕組みを理解できると考えています。また、本研究のように、アサガオではトランスポゾンを利用して新しい突然変異とその原因遺伝子を見つけることができます。私たちは、トランスポゾンを利用した新しい突然変異体の選抜(スクリーニング)も進めています。これまでにない科学的価値や鑑賞価値の高い変異体が得られることを期待しています。


  参考文献
  Morita, Y, Takagi, K, Fukuchi-Mizutani, M, Ishiguro, K, Tanaka, Y, Nitasaka, E, Nakayama, M, Saito, N, Kagami, T, Hoshino, A, Iida, S. (2014) A chalcone isomerase-like protein enhances flavonoid production and flower pigmentation. The Plant Journal 78, 294-304. Doi:10.1111/tpj.12469

 じょうほう通信  <No.89>

PubMedのLinkOut登録について



NCBI のデータベースには LinkOut というサービスがあり、関連するサイトへのリンクを登録することができることをご存知でしょうか。よく目にするのは、PubMed からフリーのフルテキストへのリンクで、大学の図書館などが購入している文献かどうか判別し易いようにこのサービスを利用していることもあるようです。


 NBRP として LinkOut に登録し、NBRP リソースを使った論文から直接リソースの注文サイトにアクセスできるようになりましたので、その方法について解説したいと思います。
図1 は PubMed の Abstract の画面です。
赤枠部分が今回紹介する LinkOut の表示です。

NBRP では利用者からのフィードバックの受け皿として、RRC (Resource Research Circulation) を公開しております。 RRC は NBRP リソースを使った論文情報の登録サイトで、既に 12,000報以上の論文情報を格納しています。そこで、これらの情報を PubMed の LinkOut に登録しました。

  Fig.1
図1. PubMed の Abstract の画面


 最初に NCBI へプロバイダとして登録を希望するというメールを送信します。
以下の内容を記載して NCBI(linkout@ncbi.nlm.nih.gov) 宛にメールを送信。  注)英語です
・組織名
・担当者の名前
・メールアドレス
・電話番号
・住所
・リンク先の URL
・リンクを行ってほしいデータベース とリンクの範囲について
   
RRCの場合は、NBRP・RRC の説明と NBRP から提供したリソースを使用して発表された論文に対してリンクを作成して欲しい旨説明しました。 2日後に返事が届き、規模に関する質問など2,3回メールのやり取りをした後、サンプルファイルの提出を求められました。

   

 サンプルファイルとして次の二つの XMLファイルを提出します。

■ providerinfo.xml※1
こちらは、プロバイダの情報を記載したファイルです。
プロバイダ番号はプロバイダ登録後に割り振られます。

■ Resource File※2
リンクに必要な情報を記載します。
リンク先が1カ所の場合はとても簡単です。

RRC の参考例から作成されるリンクは PubMed ID が7549の論文に対して下記のようになります。

http://rrc.nbrp.jp/referenceListAction.do?pmid=7549

パラメータについては、もっと複雑な設定や論文の情報 (ISSN コードやpii・doiコード) などを使用する事もできます。
  Fig.2
Fig.3
※1 providerinfo.xmlのヘルプページ
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK3807/#files.Identity_File
※2 Resource File のヘルプページ
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK3807/#files.Resource_File
作成したXMLのフォーマットを確認するサイト
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/linkout/doc/validate.shtml


サンプルファイルが適切ならば、後日 FTPアカウントが送られてくるので、必要なファイルをアップロードすると、48時間以内に登録したリンクが表示されるようになります。その後の更新も同様に行うことができます。登録したリンクの利用状況についても、1カ月毎にジャーナル名とアクセス数の情報が送られてきてとても便利です。
今回は論文情報でしたが、NCBI が公開している様々なデータベースでも LinkOut 機能を利用する事ができます。
(渡辺 拓貴)  

 今月のデータベース

ミヤコグサ・ダイズデータベース  Legume Base (Lotus japonicus, Glycine max/soja)

 
Legume
系統数 : 9,354系統
DNA :  239,164
        (2014年6月現在)

DB名: Legume Base
URL: http://www.legumebase.brc.miyazaki-u.ac.jp/
言 語: 日本語  英語
Legume Base: ミヤコグサおよびダイズ共通のリソースの分譲サイト
    Lotus japonicus (ミヤコグサリソースデータベース) :
  実験系統、国内野生系統、RILs、EMS変異体系統、
根粒菌STM株、DNAクローン(BAC,TAC,cDNA)
    Glycine max/soja (ダイズリソースデータベース) :
  栽培系統、野生系統、RILs、RILs(MxS)、
突然変異体系統、 エダマメ系統、完全長cDNA
特 徴:   ・  採取地、気象情報、表現型等からも検索できる(ミヤコグサ野生系統)。
・  採取地を網羅したリサーチセット(ダイズ野生系統)。
・  ミヤコグサの実験系統については詳細な特性情報が公開されている。
・  すべてのリソースがウェブ上でオーダーできる。
連携DB: Lotus japonicus EST index(かずさDNA研)
Miyakogusa.jp(かずさDNA研)、rsoy(理研PSC)
DB構築グループ: NBRPミヤコグサ・ダイズ、NBRP情報
運用機関:  宮崎大学
DB公開開始年:  2004年      DB最終更新年:2014年

現役開発者のコメント:ミヤコグサ・ダイズデータベースは分譲機能を担う Legume Base、ミヤコグサのリソース情報を提供する Lotus japonicus、ダイズのリソース情報を提供する Glycine max/soja の3サイトから構成され、それぞれを連携して運用しています。歴史的な経緯があってこのようなシステムになっていますが、物理的に機能が分かれていることで機能追加がしやすいため、新しいリソース種が増えても短期間で公開でき、利用者にいち早くリソースを利用してもらうことができます。Legume Baseは公開してから10年間、変わらない形で運用を続けてきましたが、現在新しいデザインのサイトに向け準備を進めており、今まで以上に使いやすいデータベースにしていきたいと思います。