NBRP「病原微生物」
矢口貴志 (千葉大学真菌医学研究センター バイオリソース管理室 室長)
代表機関: |
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千葉大学真菌医学研究センター(真菌・放線菌) |
分担機関: |
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大阪大学微生物病研究所(細菌) |
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岐阜大学大学院医学研究科(細菌) |
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長崎大学熱帯医学研究所(原虫) |
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感染症対策への必要性が高まる昨今、感染症に関する教育や基礎研究の他、新しい診断薬や薬剤の開発研究には、標的となる質の高い病原微生物の菌株が必要となります。その病原菌すなわち細菌・真菌(含む放線菌)・原虫の収集、保存、提供を行っています。
(1) 基準株(あるいは標準株)の充実、(2) BSL 2、3 の高度病原菌の収集、(3) これまで感染例の報告がある菌種の網羅的収集、(4) 重要な菌株の遺伝子情報の整備を実施することにより、今後起こりうるいかなる感染症にも対応可能な病原微生物コレクションを目指しています。
いずれの機関においても、医療機関との連携、臨床現場へのサポート(分離菌の同定、薬剤感受性試験の実施、病原因子の検出に関する協力等)を通じて、現場から臨床株の提供(菌株寄託)を受け、分子的、形態的、生理的な菌学情報、臨床情報などを付加し、保存しています。そのため、研究もしくは教育用などの使用目的に合わせた、質の高い菌株を提供しています。 |
千葉大学真菌医学研究センター(真菌・放線菌)
病原真菌、放線菌の世界的な規模のコレクションです。深在性真菌症原因菌であるAspergillus、Candida、Cryptococcus、白癬菌の他、高度病原性のCoccidioides immitis(第3種病原体)など輸入真菌症原因菌について、新鮮な臨床株を中心に網羅的に収集し保存されています。病原放線菌による感染は、その症状が真菌症に酷似していることから、真菌症に含めて扱われていたことから、Nocardiaをはじめとする病原放線菌も保存しております。
大阪大学微生物病研究所(細菌)
病原性大腸菌群、ビブリオ属菌、その他腸管病原性を中心とした標準株と臨床分離株の世界的なコレクションです。国内でのアウトブレーク時、あるいは海外旅行者から分離された腸管感染症原因菌も多く保存されており、各菌株の性状、病原因子についての情報も豊富です。
Escherichia coli (EHEC O157: H7)、Vibrio parahaemolyticus (KX・V 237)、Streptococcus pyogenes (SSI・1)、Bordetella bronchiseptica (RB50) などのゲノム株の保存提供も実施しています。
岐阜大学大学院医学研究科(細菌)
病原性細菌基準株の保存機関としては国内最大で、ヒトに対して病原性を有する細菌菌種の 80% を保存しています。無芽胞嫌気性菌、好気性非発酵性グラム陰性菌を系統的に保存するとともに、BSL2-3 特定病原体、日和見病原体、教育用弱毒株および薬剤耐性株を収集しています。
また、保存されている日和見病原細菌の中から、世界でもまだゲノム解析が完了していない菌種を中心に約 400 株を選定し、これらのゲノム解析を進めております。
長崎大学熱帯医学研究所(原虫)
ヒト寄生性のアメーバ原虫をはじめ病原性原虫の収集、保存、提供を実施しています。この事業は他には米国の菌株保存機関(ATCC)が実施しているだけで、世界的にも貴重なコレクションです。この特徴は、全国関連機関の協力を得て我が国全体の保存原虫の登録がなされていることです。
原虫感染症であるアフリカ眠り病、アメリカ・トリパノソーマ症、リーシュマニア症、アメーバ症やマラリアなどは「世界から顧みられない熱帯病」や「今なお制圧困難な感染症」と言われ、研究機関への新鮮分離株の提供は非常に重要です。最近の研究成果の一つとして、国内外のサルから新種の腸管内寄生アメーバ原虫 Entamoeba nuttalli の分離に成功しました。サル類おけるアメーバ原虫感染の実態を明らかにすることは人獣共通感染症対策からも重要です。
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2013 年度より、日本細菌学会内に「アドバイザー委員会」を立ち上げました。その委員会では、NBRP の病原細菌部門として目指す新しいデータベースの内容について議論し、安全性を高めたワクチン株や教育用高度病原微生物のレベルダウン株の作成のほか、日本細菌学会に所属する分譲機関と連携して、全国のプロジェクト株に JNBP(Japan National Bioresource of Bacterial Pathogen) 番号を付与し、今後はこの番号で菌株情報を管理する予定です。さらに NBRP で今後収集すべき菌種の候補と収集方法について意見を集め、ユーザーの求めるリソース株を積極的に収集していきます。 |
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細菌の DATABASE の項目
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広報活動の一環として、千葉大学真菌医学研究センター HP に、「病原真菌・放線菌ギャラリー」を開設し、コロニーや光学顕微鏡および電子顕微鏡下での観察像を菌学的な解説とともに公開しています。教育目的として利用できますので是非ご覧ください。
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/gallery/index.html
(出版物などにご利用の場合は、
矢口貴志(バイオリソース管理室長) t-yaguchi@faculty.chiba-u.jp までご連絡をお願いいたします。) |
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病原真菌・放線菌ギャラリー
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