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  July2012
Vol.8 No.7
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「雑草」と「雑草型」の意味について
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 じょうほう通信 <No.71>
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「雑草」と「雑草型」の意味について

三浦 励一 (京都大学農学研究科 雑草学分野 講師)

多くの栽培植物には、雑草型があるといわれる。雑草イネ、雑草オオムギ、雑草スイカ、雑草ヒマワリというように。「雑草」は学術用語なのだろうか? 野生とは違うのだろうか? ここでは、栽培植物近縁種を念頭において、雑草(型)という語がどのような意味で使われているのかを紹介してみたい。

学術用語としての「雑草」(weed)は、田畑にはびこって農業に害をおよぼす植物をさすところからはじまった。この意味では、明治時代には「害草」と「雑草」という用語がほとんど同様に使われていたが、やがて「雑草」のほうに統一されていったようである。一方、植物生態学では、人の生活圏に生育する植物群をどう位置づけるかという別の観点があった。農耕地だけでなく、路傍や空地に生える植物種には、人為の影響の及ばないところには生育しないものが多い。雑草はたくましいとよくいわれるが、じつは人間がかまってやるときにだけ強さを発揮する内弁慶なのだ。そこでたとえば、「たえず外的な干渉や生存地の破壊が加えられていないとその生活が成立・存続できないような特殊な一群」(笠原安夫)のような定義がなされ、そのような植物群に共通した生態学的特性をさぐる研究が進められた。「雑草」について農学的定義と生態学的定義が並立しているのは欧米でも同様である。

では、栽培植物の同種や近縁種について「雑草型」というときはどういうものをさしているのか。まず、雑草型は広い意味での野生型形質をもち、人に播かれることなく、自ら種子(あるいは栄養繁殖体)をばらまき、個体群を維持していく。穀類の場合はわかりやすい判別形質があって、種子が熟したときに離層ができて脱落する「脱粒性」をもつものが野生型(場合によっては雑草型)、これをもたないものが栽培型である。

しかし、「雑草型」という言葉を用いる研究者は、それを「野生型」ともまた区別しながら使っていることが多い。そこでは、雑草の生態学的なほうの定義が意識されている。「野生型」は人為的攪乱に依存せずに世代を繰り返している集団をさすのに対し、「雑草型」は耕地内や人里近辺の攪乱環境に適応し、人為的攪乱がとだえれば消滅してしまうような集団をさす。例えば、アジアイネの野生祖先種Oryza rufipogon の典型的なものは、河辺などの湿地に生えるほふく性の植物であるが、雑草イネ(weedy rice)といっているのは、水田内に生える脱粒性のイネのことで、植物体は直立し、脱粒性をもつ点以外は栽培イネによく似ている。インドやアフリカの農村を歩くと、畑の中や生け垣に長さ4 cm程度の実をつける野生のメロンが生えているのをよく見かけるが、これも生育環境からは雑草型と位置づけることができる。


photo1
写真:雑草メロン(左)と雑草モスビーン(右)。インドのグジャラート州で。

農耕地の中や周辺に生える栽培植物の雑草型の由来については、(1)その作物が栽培化された頃からずっと作物の近辺につきまとっている、(2)栽培型の突然変異や品種間の交雑・組み換えに由来する、(3)栽培型と野生型の最近の交雑に由来する、などの可能性が考えられる。従来はこれらに対して、みな雑草型(weedy)の語をあてていたが、Gressel(2005)は(2)と(3)に対して、動物の例にならってferalという用語を用いることを提案し、これがしだいに受け入れられてきている。なお、作物そのものの種子が、たまたま目的外の場所にこぼれて発芽したものは、feralではなくvolunteerという。たとえば、近年、北海道で問題化している「ノライモ」はvolunteer potatoである。

念のためにつけ加えておくと、英語のweedyが栽培植物などの雑草型という意味で使われる頻度は高くない。Weedyのもっとふつうの意味は、畑などが雑草だらけということである。管理が悪くて雑草だらけになってしまったコムギ畑をweedy wheatなどということもあるのでご用心を。


 じょうほう通信  <No.71>

スマートフォン向けのサイトをドラック&ドロップで作ろう !



皆さんの周りでスマートフォンをお持ちの方はどれくらいいるでしょうか。株式会社ディーツー コミュニケーションズの調査結果(※1)によると、2012年2月時点で普及率は23.6%とのことです。PC向けのサイトもスマートフォンで問題なく閲覧できますが、PCに比べて画面サイズが小さいため、スマートフォンに最適化されたサイトを用意すると、ユーザーはより快適に訪問してくれるはずです。しかしながら、スマートフォン向けのコードを一から記述するのは大変です。スマートフォン向けのサイトは、どのように作成すれば良いのでしょうか。

そこで「Codiqa」(※2)を紹介します。Codiqaは、ブラウザ上でページのパーツをドラッグ&ドロップしていくことにより、直感的にjQuery Mobile(※3)ベースのスマートフォン向けのサイトのプロトタイプを作っていくサービスです。jQuery Mobileとは、AppleのiOSや、Androidなどのスマートフォン向けに最適化された、JavaScriptのフレームワークです。
Codiqaのサイトではアカウントを作成する必要がありますが、jQuery Mobileのサイトでは不要なのでこちらで試してみましょう。


1) jQuery Mobileのサイトにアクセスすると、ページの中頃に図1のような「Easy to use: Try it now !」が表れます。

2) 図1の緑枠に囲まれたページのパーツの中から、追加したいパーツをドラッグし、緑枠の箇所にドロップするとパーツが追加されます。

図1. ページ作成画面
Fig.1
3) パーツを追加したら、上部にある「BUILD-PREVIEW」のスライドバーを「BUILD」から「PREVIEW」に変更します(図2)。
もし修正する必要がある場合は、「BUILD」に戻せば、パーツの追加・編集・削除を行うことができます。

4) これで問題ない場合は、図2Download HTML」をクリックすると、ページを構成するファイルをダウンロードすることができます。ダウンロードせずにブラウザを閉じてしまうと、作成したページのデータが消えてしまいますので、注意してください。

図2. プレビュー画面
Fig.2
ダウンロードしたファイルをそのまま公開することも可能ですし、細部を修正することも可能です。気軽にスマートフォン向けのサイトの作成を試すことができますので、1度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
(木村 学)  
   
※1. 株式会社ディーツー コミュニケーションズ - スマートフォン普及動向調査
  http://www.d2c.co.jp/news/2012/20120418-1340.html
※2. Codiqa
  http://www.codiqa.com/
※3. jQuery Mobile
  http://jquerymobile.com/
 

 お薦めBook! <No.7>

「移行化石の発見」           ブライアン・スウィーテク著  野中香方子訳 (文芸春秋、2011年)


アメリカの若い古生物学者による著作で、原題は邦訳よりもかなり控え目の”Written in Stone”。ダーウィンが、進化の中間段階の化石(つまり、移行化石)が見つからないことに悩んだという話は有名である。ところが本書によると、この2,30年の間に動物の移行化石はぞくぞくと見つかってきたという。本書では、魚類から陸上四肢動物への進化、爬虫類から鳥類への進化、哺乳類の祖先、陸で生活していたクジラの祖先、ゾウとウマの進化、類人猿からヒトへの進化といった問題が取り上げられ、豊富な化石試料とともに専門家以外には知られていない多くの事実が開示される。

それぞれの生物進化に共通するのは、進化が直線的ではなく、多数の枝が放散し、その一方で絶滅によって枝が刈り込まれるといった、いわば生成と消滅を含んだ錯綜したパターンを示す点だという。たとえば、鳥類への進化では多種類の羽毛恐竜への放散がまず起こった。始祖鳥はその中の1つにすぎず、鳥に至る中間形態というよりも途中で絶滅した化石種に当たるという。こうした多くの事例から、かつて言われた「定向進化」は真でないことがよく分かる。また、進化の歴史を巻き戻すと人間にまで至る進化のプロセスが再現するだろうか、という「グールドの問題」にも自ずと答えられる。(K.N.)