第18回国際ラット遺伝システムワークショップの報告
芹川 忠夫
京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設長 教授
第18回国際ラット遺伝システムワークショップが2010年11月30から4日間、京都大学で開催された。このワークショップは、1977年の初会合より原則として偶数年に開催されてきた歴史あるラットコミュニティーの国際会議である。1994年の札幌、2002年の京都に続く、日本では3度目、京都では2度目の開催であった。近交系ラットが移植研究に利用されていたことから、当初は組織適合遺伝子に力点が置かれており国際ラットアロアンチゲンワークショップ(International workshop on rat alloantigenic system in the rat)という名称であった。遺伝的に制御したラット系統を使用することの重要性は、移植研究に限定されることではないことから、2000年から現在の名称に変更された。NBRP-Ratの本ワークショップとの繋がりは深く、第14回ワークショップ(2002年、京都)は、第1期NBRP-Ratのスタートに呼応させて開催した。
今回の第18回ワークショップは、大変魅力的なものであった。その理由は、堰を切ったごとくの最近のラット研究の進展に基づいている。すなわち、
1)遺伝子ノックアウトラットあるいは遺伝子変異ラットが人工的に創れるようになったこと、2)次世代シークエンスが利用できるようになり、遺伝育種学的手法で開発された疾患モデルラット系統の全ゲノムシークエンスあるいは発現プロファイルが得られるようになったこと、3)その結果、平常時および疾患時における生理的状態を遺伝子のネットワークとして知ることができるようになり、ヒトとラットの生物機能をより深く比較解析できるようになったこと、および、4)日本のNBRP-Rat、米国のRRRC (Rat Resource and Research Center) 及びRGD (Rat Genome Database)、そしてヨーロッパのEURATRANS (European large-scale functional genomics in the rat for translational research) といった研究基盤が整備、拡充されたことによる。
Scientific program
Nov 30 (Tue)
- Welcome lectures (History/Model/Translational research)
Dec 1 (Wed)
- Disease model-1 (using SHR, FH, LH, BN strains)
- Disease model-2 (Common disease, Mitochondrial genome)
- Genome
- Transcriptome/Network
- Poster presentations: History, Reproduction, ES/iPS, ZFN, Transcriptome, Disease models (Cancer, Hypertension, Diabetes, ADHD, Behavior, Tremor, Epilepsy, Cataract, Eosinophilia, …)
Dec 2 (Thu)
- Disease model-3 (Hypertension, Nephritis, LDLR, Netrin4)
- Stem cells
- Manipulating the genome (using ZFN)
- Behavior/Neuroscience
Dec 3 (Fri)
- Cancer
- Resource/Database
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開会式においては、オーガナイザー芹川の開会挨拶、湊 長博 京都大学大学院医学研究科長の歓迎の挨拶に引き続き、文部科学省研究振興局 ライフサイエンス課 ゲノム研究企画調整官 田中一成様より来賓の挨拶を頂いた。
学術研究発表は、招待講演、一般口頭発表、および一般ポスター発表に区分して行われた。内容は、
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会場の様子 |
- ラット研究の歴史
- ヒト疾患モデルとしての重要性
- トランスレーショナル研究への利用
- がん、高血圧症、糖尿病、生活習慣病、腎炎、てんかん、本態性振戦、多動症、
白内障など各種ヒト疾患モデルラット の病態解明研究
- ラット系統の全ゲノムDNAシークエンス情報
- ミトコンドリアゲノム解析と疾患
- 疾患の遺伝子ネットワーク解析
- ラットES細胞とiPS細胞の開発応用研究
- 新規の遺伝子改変ラットの作製システムとそれを用いた疾患解析
- ラットリソースセンターとデータベースに関する情報
などいずれもラット研究の新鮮な話題であり、ラット研究を推進している日欧米三極の先導的研究者を含めた活発な意見交換がなされた。参加者は、国外から66名(米国29名、ドイツ14名、英国11名、チェコ共和国7名、オランダ2名、中国1名、ガーナ共和国1名、台湾1名)、国内から114名で、合計180名であった。37パーセントが国外からの参加者であったこと、国際ラットコミュニティーの代表者に加えて国内外の若手研究者が多く含まれていたことから、この国際ラット会議を起点として、新たな国際共同研究の開始や研究者間の交流が大いに活性化すると期待された。 |
この国際会議は、主催:第18回国際ラット遺伝子システムワークショップ組織委員会、共催:ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」、京都大学グローバルCOEプログラム「生命原理の解明を基とする医学研究教育拠点」、後援:(独)日本学術振興会、(財)成人血管病研究振興財団、(財)京都大学教育振興財団、日本製薬団体連合会、関西実験動物研究会、多くの企業、および個人より多大なご支援を受けたことを記し、御礼を申し上げる。■ ----------------
第18回国際ラット遺伝システムワークショップ
オフィシャルサイト: http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/workshop2010/ |
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Progress in the Rat Community
and Researches |