系統 - 野生イネコアコレクション
SINEコード
レトロポゾン p-SINE1 は平均 122 塩基対の SINE (Short INterspersed Element) であり、イネゲノム上に多コピー散在している。
SINE は一旦ゲノムに挿入すると切り出されることがないので、染色体上のそれぞれの座位におけるその挿入の有無、すなわち多型が系統分類における信頼性の高い分子マーカーとなる (Ohtsubo et al., 2004) 。
「SINE コード」は、上に述べた SINE の挿入の多型にもとづいて、イネ属内の 種を分類する ために作成した、(1, 0) 表記のコードである。
指標となる数個の p-SINE1 遺伝子座について挿入の有無を 1 (有;+)と 0 (無;?)の数列で表したもので、挿入の有無は、それぞれの p-SINE1 の両側の隣接配列にハイブリダイズするプライマーを用いて genomic PCR を行い、その産物のサイズで判定する(図1)。
以下に説明する AA ゲノムを持つアクセッションの種を判定するための「 AA ゲノムコード」のほか、AA 以外のゲノムを持つ遠縁野生イネの ゲノム型 や Oryza rufipogon などの種内の 生態型を 判定 する 数種類の SINE コードも順次公開予定である (Cheng et al., 2003 ; Xu et al., 2005b) 。
- AA ゲノムコード
AA ゲノムを持つアクセッションの種を判定するための、 ”AA” ではじまる6桁の SINE コード。
指標となる6個の p-SINE1 遺伝子座 (Cheng et al., 2002) について PCR で挿入の有無を調べ、1(有;+)と 0(無;?)で表記する (図2)。
使用するプライマーについて(別表1)を参照。コードと種名との対応は (表1) に示した。
- 表1: AA ゲノムコードと種名との対応
コード | 種名 |
---|---|
AA110000 | Oryza rufipogon |
AA101000 | Oryza barthii |
AA101100 | Oryza glumaepatula |
AA100010 | Oryza meridionalis |
AA100001 | Oryza longistaminata |
野生イネのコアコレクションのうち、 AA ゲノムを持つ各アクセッションについて PCR で p-SINE1 の挿入の有無を調べ、 AA ゲノムコードによる種の判定を行った (Cheng et al 2002 ; Xu et al., 2005a) 。
PCR の鋳型は国立遺伝学研究所の保存系統から抽出したゲノム DNA を使用した。
一部の結果を下の (表2) に示す。例えば W0106 はコード表記 (AA110000) となり、 O. rufipogon と判定された。
これは従来の判定と一致する。各アクセッションの AA ゲノムコードはそれぞれの「系統詳細」のページに記載してあるが、すべての AA ゲノムコアコレクションについての検定結果の詳細は (別表2)を参照されたい。
コードによる判定によって種名の変更があった場合は、系統詳細の種名の欄に 「SINE コードにより判定」 と記載した。
PCR 産物が増幅しないなどの理由で p-SINE1 の挿入の有無がわからない場合はコードに「*」を用いた(例: *01000 )。Rank2 および Rank3 に属する4つのアクセッション( W0747, W1646, W0180, W1420 )について「*」を用いたが、 いずれの場合も種の判定に影響はなかった。
別表1( PCR に用いたプライマーの情報)
別表2(結果のまとめ)
- References
Cheng et al. (2002) Genes Genet. Syst. 77: 323-334 (PMID: 12441643) (J-STAGE)
Cheng et. al. (2003) Mol. Biol. Evol. 20: 67-75 (PMID: 12519908)
Ohtsubo et. al. (2004) Breeding Sci. 58: 1-11 (J-STAGE)
Xu et. al. (2005a) Genes Genet. Syst. 80:129-134 (PMID: 16172525) (J-STAGE)
Xu et. al. (2005b) Genes Genet. Syst. 80:161-171 (PMID: 16172529) (J-STAGE)