イネの基礎 - 種類と分布

Next Next


イネ属の種の形態と分布特性 1

(原図、資料:森島啓子、秋本正博)

O. sativa complex O. sativa L. (AA) O. glaberrima Steud. (AA)
O. rufipogon sensu lato(AA)  O. barthii A. Chev. (AA) O. longistaminata Chev. et Roehr. (AA)
O. meridionalis Ng (AA) O. glumaepatula Steud. (AA)  

O. sativa complex

分布地図へ


このグループに属する2つの栽培種、5つの野生種は、相互のF1雑種が減数分裂時に正常な染色体対合を示すので、同じゲノム(AA)を共有する近縁種である。しかし、雑種不稔性などの種々の生殖的隔離が種間・種内に生じている。

O. sativa L. (AA)

アジア起源の栽培イネ。現在では世界中の熱帯から温帯にかけての広い地域で栽培されている。多様な品種が分化してインド型と日本型に大別され、日本型はさらに熱帯型と温帯型に分けられる。品種改良が進み多くの高収品種が普及する一方、熱帯の山地や深水地帯には多数の在来品種がまだ残っている。

O. glaberrima Steud. (AA)

O. glaberrimaの畑
O. glaberrimaの畑

西アフリカ起源の栽培イネで、栽培地域も主として西アフリカに限られる。無毛の品種が多く、葉舌が短く丸いことで、長くて尖った葉舌を持つ O. sativa と区別できる。
近代的な品種改良はあまり進んでいない。

O. rufipogon sensu lato(AA)

O. rufipogon
O. rufipogon

自生地と栽培風景
自生地と栽培風景

自生地
自生地

O. rufipogon
O. rufipogon

O. sativa の野生祖先種。アジア・オセアニアの熱帯から亜熱帯にかけて広く自生し、生態的・地理的変異に富む。複雑な種間・種内変異のため、分類・命名に混乱が多かった。 安定した深水環境に適応する多年生的・他殖的な生態型はO. rufipogon sensustricto、撹乱の激しい浅水環境に適応する一年生的・自殖的な生態型はO. nivaraと呼ばれる場合がある。他の大陸に分布する近縁種と共にO. perennis complexとまとめて呼ばれたこともあった。栽培イネと共存すると容易に自然交雑し、後代が水田やその周辺に雑草化している場合が多い。

O. barthii A. Chev. (AA)

O. barthii(Chad)
O.barthiiの大集団、チャドにて

O. glaberrimaの野生祖先種で、かってはO. breviligulataと呼ばれた。 長いのげを持ち、種子だけで繁殖する一年生種で、アフリカのサバンナや深水地帯に自生している。O. glaberrimaと容易に自然交雑し、連続的な変異を示す集団が多数見られる。

O. longistaminata Chev. et Roehr. (AA)

O. barthii and O. longistaminata
ナイジェリアにて

O. barthiiと呼ばれたこともあった。よく発達した地下茎を持つ多年生種で、 アフリカに広く分布。自家不和合の傾向があり、高い他殖率を持つ。O. barthiiと共存することもあるが、自然雑種はほとんどない。

O. meridionalis Ng (AA)

O. meridionalis
O. meridionalis

オーストラリアにて
オーストラリアにて

オーストラリア北部に分布する一年生種。AAゲノム種の中で 他種ともっとも遺伝的に遠いと考えられている。

O. glumaepatula Steud. (AA)

O. glumaepatula
O. glumaepatula

自生地
自生地

アマゾンにて
アマゾンにて

中南米の湿地に広く分布。栄養繁殖をする多年生型から、主として種子繁殖するアマゾン流域の生態型まで多様な種内変異がある。O. rufipogonの多年生型と形態的には類似する系統もあるため、O. rufipogonに含められることもある。

Next Next


/rice/oryzabase