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  June 2011
Vol.7 No.6
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 情報センター便り 
2012年からGBIF(地球規模生物多様性情報機構)は第3期へ <後編>
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 じょうほう通信 〈No.58〉
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 情報センター便り

2012年からGBIF(地球規模生物多様性情報機構)は第3期へ <後編>

菅原秀明  国立遺伝学研究所 特任教授
 日本GBIFノードは何をしているのか
2)GBIFポータルサイトの運用

GBIFノードの第2の役割は、それぞれの国や地域に適合した情報提供システムを用意し、生物多様性情報の利用を促進することである。遺伝研ではGBIF日本ポータルサイト (http://www.gbif.nig.ac.jp/) を運営して、前号 項目1)に対応するGBIFデータ公開支援、和名によるGBIF検索機能、生物多様性に関連する論文やイベントの紹介、国際動向の紹介、国内活動の紹介、有用リンク集などを提供している。有用リンク集では、247サイトについてタグと簡潔な説明文を付している。

GBIFポータルサイトではまた、遺伝研、東大ならびに科博が2006年から毎年共催してきた「21世紀の生物多様性学シンポジウム」の講演資料も公開している。
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講演スライド
2006年  生物多様性インフォマティクスを創出する
2007年   生物多様性インフォマティクスを創出する2
2008年   環境・生物多様性関連の大規模情報ネットワークの構築と利用
2009年   生物分布情報から探る生物多様性 - 観察情報の集積とその利用
2010年   生物の学名と和名は何故ややこしいのか - 生物多様性情報探索のキー

さらに、GBIF日本ポータルサイトでは、GBIFと連携している Barcode of Life のデータベース(http://www.boldsystems.org/views/login.php) (菅原2011※1) と国際塩基配列データベース (http://www.insdc.org/)を利用した生物種同定システム(http://bol.ddbj.nig.ac.jp/)も提供している。2011年5月時点で、CO1、rbsL、ITS、matK、trnH-psbA、16S rRNA並びにgyrBの配列に基づいた同定が可能である。

  参考資料
  ※1   菅原秀明
「生物多様性情報とバーコード・オブ・ライフ」  / DNA多型 / Vol.19:1-12 (2011)

3)分布情報から解析へ
(a)分布情報

GBIF日本ポータルサイトの検索窓に和名を入力するだけで、生物種の分布情報を図2のように地図上で確認することができる。和名「イタドリ」をキーワードとして入力し、表示された候補学名からFallopia japonicaを選択し、GBIF利用規約をAcceptし、subspeciesやvarietyなどへの展開された学名リストからSpeciesを選択すると、図2が得られる。

Fig.2
図2:日本原産のイタドリの分布を表示させる。緯度経度各1度のセルにおける分布密度が高いほど、黄色から赤に段階的に表示色が変わる。緑色の地域は、分布が観測されていない地域。(GBIFデータポータルのイタドリのページから引用)
 
(b)生物分布予測(Nicheモデリング)

GBIFシステムと openModellar (http://openmodeller.sourceforge.net/) の連携が実現したことから、デフォルトのパラメーターで良ければ、(a)で分布図を表示させた状態から、4回のクリック操作のみで、5分程度で生物分布を予測することが可能になった。遺伝研では、日本原産イタドリの分布予測を例として、このニッチモデリングの動画マニュアル(http://gbif.ddbj.nig.ac.jp/niche_model/)を作成し公開している。図3に動画マニュアルの結論部分を紹介する。図2と照合すると、国外での観測結果と整合する分布が予測されていることと、観測例がない南半球での繁殖も予測されることが分かる。

Fig.3
図3  生物分布予測機能(ニッチモデリング)の利用例:
日本における観測データをもとに、イタドリが世界各地で繁殖する可能性を予測。図は、動画マニュアルの画面キャプチャー。
 
(c) GBIF外の情報資源とのマッシュアップ

GBIFに登録されている生物種の分布情報と、その生物種が媒介する感染症の情報とを組み合わせて、感染症がどの地域で発生しているか、あるいは発生する可能性が高まっているかを推測することを試みた。(①-④


① Freebase (http://www.freebase.com/) を使った感染症と媒介生物種の関係抽出
Freebase には、構造化された2,000万以上のデータが格納されている。例えばマラリアの場合、以下のように Resource Description Framework (RDF) (http://ja.wikipedia.org/wiki/Resource_Description_Framework)として知識が表現されている。
  • /en/Malaria(主語) type(述語)
    /medicine/infectious_disease(目的語)
    :マラリアは感染症の一種である
  • /en/Malaria(主語)
    /medicine/infectious_disease/vector(述語)
    /en/anopheles_gambiae (目的語)
    :マラリアを媒介する生物種は Anopheles gambiae である

このように構造化されたデータを用いることで、一般の検索エンジンでは抽出が困難な感染症と、その感染症を媒介する生物種の関係を取得できる。


②Animal Diversity Webを使って生物種と感染症の情報を拡充

Animal Diversity Web(http://animaldiversity.ummz.umich.edu/site/index.html)には、さまざまな生物種の情報が文献情報を引用して整理されている。その中に「Economic Importance for Humans: Negative」という項目があり、媒介する感染症の情報も記載されている。その情報を遺伝研にて確認し、生物種と感染症の関係を抽出して、Freebaseからの情報を補った。


③Freebaseの拡充

Freebaseは、誰でもアカウントを作成して、構造化された情報を登録することが可能である。そこで筆者らは、Animal Diversity Webから抽出した、生物種と感染症の関係をFreebaseに登録した。


④媒介生物種の観測情報の調査

拡充したFreebaseから抽出した、感染症と媒介生物種の関係を参考に、GBIFから得たPeromyscus maniculatus(ネズミ)の米国における分布情報と、米国における Hantavirus 感染の状況を比較してみた。図4の左右を照らし合わせて見ると、東西の分布の様子が類似しており、より精密な最新データが得られれば、媒介生物種の分布から感染症の予防対策を講じることも可能になるように思われる。

Fig 4
図4 GBIFから得たPeromyscus maniculatus(ネズミ)の分布(左図)とそのHantavirus感染の状況(右図)
 
 これから何が必要か

GBIFは既に10年の歴史を有している。その間に新しい情報技術が生まれてきている。例えば、Linked Data (http://linkeddata.org/) の考え方と仕組みである。こうした新しい情報技術を活用して、より洗練された分散統合情報システムを構築できる可能性がある。しかし、今取り組むべきことは「データ、データ、データ」である。ABSに対応するにしても、生物多様性保全の施策を講じるにしても、侵入種を予測するにしても、感染症の広がりを分析するにしても、網羅的で信頼性の高い、時系列データが必要である。一方で、GBIFデータ公開件数で1位と2位を占める米国と英国においてさえ、大規模な博物館で維持されている標本情報の、5%程度しかデジタル化されていないと言われている(GBIF Strategic Plan 2012-2016)。地を這うような作業であるが、カードやノートに記録されているデータのデジタル化と、デジタルデータのGBIF標準での公開作業を、やりきってこそのGlobal Biodiversity Information Facilityである。

一方で、生物多様性情報の物差しとなる標本情報は重要であるが、GBIF第3期の旗印である“Seizing the future to benefit science and society”を達成するためには、むしろ観測データ集積とBarcode of Lifeとの連携を推し進めることも考えられる。2011年6月にアルゼンチンで開催される、GBIF第18回総会での議論が待たれる。■


 じょうほう通信 〈No.58〉

Windows7とIE9を使ってさらに便利に




2011年4月にMicrosoftは、Internet Explorer9 (IE9)の日本語版のダウンロードでの提供を開始しました。最初にWindows7とIE9をお使いの方に、お気に入りのウェブサイトを一般的なアプリケーションのようにタスクバーにボタンとして登録できる「ピン留め」機能を紹介します。

またサイト管理者向けに、このピンサイトとして設定したタスクバーのアイコンを右クリックすると表示される「ジャンプリスト」という、サイトごとによく使うメニューを、ワンクリックで開くことができる、メニューのカスタマイズの仕方も紹介します。



 ピン留め機能
最初に「ピン留め」機能の 紹介です。 タスクバーへウェブサイトを登録するには、「URLの表示されている欄の左のアイコン」または「ウェブサイトのタブ」をタスクバーにドラッグ&ドロップするだけです。
ウェブサイトをピン留めすると、タスクバーにウェブサイトのアイコンが追加され、それをクリックするとピン留めしたウェブサイトが表示されます。
ウインドウの左上は、ウェブサイトのアイコンが表示されるように変化します。(図2)
 
図1. ウェブサイトのピン留めの仕方

図2. ピン留めした時のウェブサイト
 


 ジャンプリスト機能
次に、ジャンプリストのカスタマイズの仕方の紹介です。
今回は、NBRP情報公開サイト (http://www.nbrp.jp) の上部メニュー「NBRPについて, 代表機関, リソース検索 …」へのリンクをジャンプリストに追加してみました。
例えば「NBRPについて」を表示させる場合は、HTMLの<head>…</head>の間に、以下のメタタグを追加します。
  ------------------------------
<meta name="msapplication-task"
content="name=NBRPについて ;
action-uri=http://www.nbrp.jp/about/about.jsp;
icon-uri=http://www.nbrp.jp/image/favicon.ico" />
------------------------------
上記メタタグの形式は、以下のとおりです。
------------------------------
<meta name="msapplication-task"
content="「ジャンプリストに表示される名前」;
action-uri=「ジャンプリストの項目をクリックした時の遷移先URL」;
icon-uri=「ジャンプリストの項目の左側に表示されるアイコンURL」" />
------------------------------
※今回はWindowsとIEのみを対象としてます。

図3. カスタマイズされた ジャンプリスト
 
(木村  学)