マウスは実験動物としてライフサイエンス研究に多大な貢献をしてきましたが、マウスとヒトは系統学的に離れているため、生理学的、解剖学的、組織学的に違いが多く、マウスで得られた研究結果を直接ヒトに当てはめることができない場合も多くあります。このような背景から、ヒトの疾患の研究などでは、マウスよりもヒトに近い霊長類の実験動物を用いた研究が重要となっています。1960年代より霊長類の実験動物の一つであるコモンマーモセット(Callithrix jacchus:以下マーモセット)は、ライフサイエンス研究に用いられるようになっており、1980年後半からその利用数は年々増加しています。
マーモセットはヒトと同じ真猿類に属する南米ブラジル北部原産の小型の霊長類です。真猿類は旧世界ザル(狭鼻類)と、新世界ザル(広鼻類)に分けられます(図1)。新世界ザルは約2,600 - 2,700年前に旧世界ザルと分岐したと言われており、これはヒトとマカク類が分岐する数百年前であるとされています。マーモセットを含む新世界ザルは、早期に分岐した結果、生物学的に独自の進化を遂げ、霊長類としてヒトと類似した特徴を持ち併せながら一方でヒト、旧世界ザルとは異なる様々な特徴を持つようになりました。
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