-国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます-


BioResource Newsletter  Vol.4 No.3

リソース関連イベント情報:

詳細


リソースセンター紹介 No.23:

・「ニワトリ」
吉村 崇 (名古屋大学大学院生命農学研究科
附属鳥類バイオサイエンス研究センター)

 

・「ニホンウズラ」
森 誠(静岡大学農学部 応用生物化学科)

じょうほう通信  No.31:

・ウェブデザイン補助ツール
〜 IE, Firefox, Safari 〜

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2008/4/30  


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バイオリソース関連サイトは以下のサイトからご覧になれます。

NBRP http://www.nbrp.jp/
SHIGEN  http://www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm
WGR http://www.shigen.nig.ac.jp/wgr/
JGR http://www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp
 

  リソース関連イベント情報

 第4回 ミヤコグサ・ダイズシンポジウム

     日程:2008年 5月15日(木) 12:00 - 5月16日(金)
     場所:理化学研究所横浜研究所 植物科学研究センター
     参加費:無料

 第18回 酵母合同シンポジウム  酵母の挑戦
   「生命現象の包括的理解と応用に向けて」

     日程:2008年 6月5日 (木) - 6日 (金)
     場所:甲南大学 甲友会館 (〒658-8501 神戸市東灘区岡本8-9-1)


詳細はこちらからご覧になれます。 http://www.nbrp.jp/

 
  リソースセンター紹介 No.23

 

 「ニワトリ」

     吉村 崇  (センター長)
     名古屋大学大学院生命農学研究科附属
     鳥類バイオサイエンス研究センター


ニワトリの起源、赤色野鶏
(左がオス、右がメス)   


ニワトリ


 

logo 1. ニワトリの重要性

   ニワトリは紀元前5,400年頃にアジアの赤色野鶏 (Gallus gallus)を家畜化したことに起源を発し、食料資源としても重要かつ身近な存在です。 鳥類は進化上、 哺乳類と他の脊椎動物を橋渡しする重要な存在で、特にニワトリは現存する約9,600種の鳥類の代表的モデル生物です。これまで、がん、ウイルス、免疫、発生、神経科学などの研究分野や、ワクチンや医薬品の生産にも利用され、 多大な貢献してきました。我が国における実験動物としてのニワトリ利用数は胚を除いてもマウスの1/20、ラットの1/2以上の規模を誇っています。

logo 2. ニワトリ遺伝資源の現状

   2004年のニワトリゲノム解読により遺伝資源としてのニワトリの重要性はさらに増していますが、諸外国では研究予算の削減によって鳥類バイオリソースが次々と姿を消しています。鳥類遺伝資源対策委員会(AGRTF)によると、1984年から1998年の間にアメリカとカナダにおいて268系統のニワトリが消失したことが報告されており、その後もその流れに歯止めがかかってません。鳥類においては胚の凍結保存技術が確立されていないため、生きたコレクションとして維持する必要があることもその流れに拍車をかけています。したがって我が国のニワトリ資源の保存と供給には大きな期待が寄せられています。
   しかし試験・研究用のニワトリの大部分は商品(複数種鶏の多元交配から生産されるヘテロ性の極めて高い個体)からの転用であり,遺伝的に標準化された系統の占める割合は極めて低いのが現状です。

logo 3. センターのミッション

   生命農学研究科では、愛知県の家禽産業への貢献を重視して、1952年以来、文部省事業「野鶏・家鶏系統保存事業」を継続してきました。この歴史をふまえ、平成19年度から文科省特別教育研究経費(研究推進)「鳥類生命科学におけるポスト・ゲノム研究の展開-鳥類遺伝資源の多様性維持・開発と高次機能研究への活用-」がスタートしたのに伴って、当センターは発足しました。
   当センターでは30年以上にわたり、多型マーカーをホモ化する方法で高度に近交化を図った10系統を含む18系統のニワトリを維持しており、遺伝資源と研究情報の提供に努めています。国際的に認められた近交系や高度近交化系統は本センター以外には少ないのに対して、ニワトリ標準化系統の利用を期待している研究者の潜在数は極めて大きいといえます。 試料提供数も年々増加しており、2007年度実績は4,885個体(所属機関外41%、3,546個体が近交化系統)となっています。今後もこの活動をさらに加速させ、我が国の鳥類研究者コミュニティの形成と鳥類研究の発展に貢献したいと考えています。



図 1

代表的な近交系系統
(WL-G)

 

図 2. 鶉尾

高知県原産の小型愛玩用品種。尾骨が欠如しており尾羽が生じない特徴を持つ。

 

図 3.
矮鶏(三色碁石)

日本を代表する愛玩用品種である。小型で短脚、様々な羽色の内種が確立されている。 海外でもJapanese bantamとして人気が高い。

 

図 4.
ポーリッシュバンタム

ヨーロッパ原産の愛玩用品種。小型鶏で毛冠およびV字型のとさかを有する。また、頭骨が隆起する珍しい形質を有している。

 

 

 「ニホンウズラ」

    森  誠   (教授)
    静岡大学農学部応用生物化学科


ウズラの羽毛突然変異系統


ウズラ

 

                     

logo 1.ウズラと日本人

   日本人初の宇宙飛行士は毛利衛さんのはずでしたが、チャレンジャー爆発事故のために打ち上げ延期となり、TBSの秋山豊寛さんがニホンアマガエルとともに日本人初となったのは有名な話です。しかしその9ヶ月前の1990年3月22日に旧ソ連の宇宙ステーション「ミール」で孵化したニホンウズラのことはそれほど知られていません。
   ニホンウズラ(Coturnix japonica)は、ニワトリと同じくキジ目キジ科に属する鳥類で、日本人によって家畜化された唯一の動物と言われています。和牛、道産子、日本鶏など、我が国が誇るべき在来家畜は、人の手による飼育・繁殖・遺伝的コントロールがすでに可能となっていた動物を海外から導入し、我が国の気候風土に適するよう改良しただけに過ぎません。ニホンウズラは、戦国時代から日本人が啼き鶉として飼育・繁殖していたものを基礎とし、大正時代に採卵用に改良されたものです。

 

日本画

讃岐籠の中にいるのが雄ウズラ、籠の外は雌ウズラ。
啼き鶉として大切にされていたのは雄であることを物語っている。 (長野県高遠町歴史博物館蔵)


   このような家畜化の歴史からみるとニホンウズラは、 我が国が国際的にイニシアティブを確保でき、独自性を発揮できる貴重なバイオリソースです。事実、実験動物としてのニホンウズラの有用性を世界で初めて指摘したのは北海道大学の島倉亨次郎であり(1940年)、それ以降、国立遺伝学研究所の河原孝忠、名古屋大学の近藤恭司、東京大学の本間運隆らの先人が実験動物化に関する調査研究を精力的に行ってきました。その結果、ニホンウズラはライフサイエンス研究の進展には不可欠な動物種となり、国内国外を問わず多くの研究者が利用するようになり、宇宙へも飛び立ったわけです。 最近では、経済協力開発機構(OECD)の化学物質の安全性評価で鳥類のモデル実験動物として推奨されるようになりました。

logo 2. 実験動物として

   鳥類は、脊椎動物門を構成する動物種の中で特異の地位を占めており、生理生態、生殖発生、環境適応等の面から、分類学上、哺乳類と両生類・魚類との間で大きく異なった動物集団として位置づけられています。陸海空の自然環境生態系の構成員として重要な役割を演じているのみならず、古くから人間社会との関わりも深く、親しまれています。そのような鳥類約 9600 種のなかでニホンウズラは性成熟がもっとも早く、孵化後6週令で卵を産み始めます。体重は140グラム前後、卵重は10グラム。飼育が容易で周年繁殖が可能、孵化日数は17日、1年間に6世代を回転させることができます。家畜化のもととなった野生種も手に入ります。
   ところが、このようにライフサイエンス研究の基礎・基盤となる重要な生物種であるにもかかわらず、公的機関によるニホンウズラのコレクションは確立されておらず、国際的に通用する標準系統も曖昧なままです。現在、静岡大学で維持しているニホンウズラの系統の多くは、もともと静岡女子短期大学の中村明氏が遺伝学研究のために長い年月をかけて収集、維持されてきたものです。他の動物種とは異なり、胚の凍結保存技術が確立していないため今のところ生体で維持していますが、今後は他研究機関と協力しながら恒久的保存体制の確立に取り組む予定です。


 

図 5.

 

図 5.

 

図 6.

 

写真 :ウズラの羽毛突然変異系統




  じょうほう通信  No.31

 ウェブデザイン補助ツール 〜 IE, Firefox, Safari 〜

  今回はウェブデザインを行う際の補助ツールについて紹介したいと思います。ウェブデザインをしたことがある方なら、意図した表示や動作がブラウザによって違うことで困った経験があると思います。ウェブデザイン用にDreamweaverのような高性能なソフトがありますが、種々のブラウザまでのチェックまではしてくれませんので、結局ブラウザ上で目チェックする必要があります。不具合の要因が分からなくてイライラすることも多いかと思いますが、そんな方のために、Internet Explorer (以下IEと略する), Firefox, Safari の主要ブラウザにおいて、ブラウザを拡張してウェブデザインのデバッグを補助してくれるようなツールが公開されています。

   Firefoxでは “Web Developer” というツールが提供されています。下記の “Firefox Add-ons アドオンページ” の検索フォームに “Web Developer” と入れて検索して、説明に従ってアドオンをインストールします。 “Web Developer Toolbar” が表示されますので、そこから “IE Developer Toolbar” と同じく、Cookieを制御したり、divやtable要素のアウトラインを表示させたり、コメントを表示させたりと様々な機能が追加されます。

■ Firefox Add-ons アドオンページ :   
  https://addons.mozilla.org/ja/firefox/

Firefox

IE

   IEではMicrosoftが提供している“IE Developer Toolbar”というツールがあります。 “IE Developer Toolbarダウンロードページ(http://www.microsoft.com/downloads/details.aspx? FamilyID=e59c3964-672d-4511-bb3e-2d5e1db91038)からダウンロードして、説明に従ってインストールプログラムをインストールします。 ツールバーにある“IE Developer Toolbarボタン”を押すと使えるようになります。 (ツールバーの幅が狭いときは右側に隠れている場合もあります。) 左図の赤く囲まれた部分を操作することによって、DOMの表示や変更HTMLタグの閲覧編集HTMLのバリデートキャッシュの無効化ブラウザのウィンドウサイズの変更などIEの設定を変更することが出来ます。

Safari


    Safariではメニューバーに “開発メニュー” という項目を追加することによって機能拡張をすることが可能です。 Safariの設定を行うウィンドウを表示 (Windows版の場合は、“編集メニュー”から “設定”をクリックします。) して、“詳細タブ”を選択し“メニューバーに [開発メニュー] を表示”というチェックボックスを選択します。 すると “開発メニュー” が追加 され、 “Webインスペクタ”“エラーコンソール”“ネットワークタイムライン” などの機能を使うことができます。

(木村 学)



logo

 


編集後記 :  今月はニュースレター初登場の鳥類リソースについてお二人の先生からご寄稿いただきました。 かつて遺伝研の「鶏舎」でニワトリのバイオリソースを保存していたようですが、今は「K棟」としてコンピュータの並ぶセンターになっています。 わが国が世界に誇れる鳥類リソースを半世紀以上も維持してこられた諸先生方の努力に敬服します。 宇宙で孵化したニホンウズラのことも今回初めて知りました。 鳥インフルエンザの脅威が取り沙汰されている昨今、もっと注目されてもよいリソースではないでしょうか。 吉村先生、森先生、ありがとうございました。(Y.Y.)

連絡先 : 〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
国立遺伝学研究所・生物遺伝資源情報総合センター
TEL 055-981-6885 (山崎)
E-mail brnews@chanko.lab.nig.ac.jp